第109章 リードのない犬

山田悠子の涙声での訴えを聞き終えても、井上颯人の表情は陰鬱なままだった。

「わかった、もういい」

その煮え切らない一言に、山田悠子の胸に募る悔しさは一層膨れ上がった。彼女は噎び泣きながら彼を責め立てた。

「颯人、もしかして後悔してるの?」

福田祐衣ではなく、自分を選んだことを。

そうでなければ、彼女が福田祐衣にいじめられたと知っていながら、これほど冷淡でいられるはずがない。

山田悠子は思わずスマホを握りしめ、期待と不安の入り混じった心持ちで井上颯人の答えを待った。

だが、今の井上颯人にそんな機微を気遣う余裕などあるはずもなかった。

彼の頭の中は会社のこと、金のこと、株式のこと...

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